大人のやり直し英語は、何から始めるべきか
Summary
英語のやり直しで最初に決めるのは、教材ではなく「前回どこで止まったか」です。止まる理由は、時間・やり方・モチベーション・成果が見えない不安の4つに分かれ、それぞれ最初の一歩が違います。この見当を付けずに始めると、教材を変えても前回と同じ場所で止まります。この記事は4つの切り分けと、型ごとの一歩をまとめています。
「英語をやり直したい」と思ったとき、まず教材を探したくなります。単語帳、アプリ、オンライン英会話、参考書。選択肢は十分すぎるほどあります。
にもかかわらず、数か月後に手が止まっている。しかも一度目ではなく、二度目や三度目という人が少なくありません。
ここで起きているのは、教材選びの失敗ではありません。前回と同じ場所で、同じようにつまずいているということです。だとすれば、次に変えるべきなのは教材ではなく、つまずいている場所の方です。
「続かない」は4つに分かれる
続かなかった理由を聞くと、返ってくる答えはおおむね4つに集まります。
- 時間がとれなかった
- 正しいやり方がわからなかった
- モチベーションが続かなかった
- 成果が見えず、不安になった
同じ「続かなかった」でも、この4つは中身がまったく違います。行動科学では、人の行動が起きるには「できる状態(Capability)」「やれる環境(Opportunity)」「やりたい気持ち(Motivation)」の3つが揃う必要があると考えます。COM-B と呼ばれる枠組みです。
上の4つは、この3つのどこが欠けているかに対応しています。
| つまずきの型 | 欠けているもの |
|---|---|
| 時間がとれなかった | 環境(学習が入るすき間) |
| やり方がわからなかった | 能力(手順) |
| モチベーションが続かない | 動機(波の受け皿) |
| 成果が見えず不安 | 能力(進捗を測る物差し) |
欠けている場所が違えば、効く打ち手も変わります。 時間が無い人に「良い教材」を渡しても解決しませんし、手順が定まらない人に「やる気を出そう」と言っても意味がありません。
それぞれの、最初の一歩
時間がとれなかった人
学習時間を増やすことから始めません。置き場所を1つ固定します。
予定が空いた日にやろうとすると、忙しい週にまるごと消えます。そうではなく、すでに毎日必ずやっていること——歯みがき、通勤、昼休みの終わり——の直後に、5分だけ置きます。
長さより、毎日同じ場所に置くことを先に決める。短くても、場所が決まっていれば残ります。
やり方がわからなかった人
毎回「今日は何をやるか」から考えていると、それ自体が負荷になって手が止まります。迷う回数を減らすことが先です。
今週やることを1つに絞り、手順を紙に書いて固定します。「教材を開く → 前回の続きを声に出す → 3分だけ書く」のように、考えなくても始められる形にする。教材の良し悪しより、始めるまでの摩擦の方が効いています。
モチベーションが続かなかった人
やる気には波があります。波があること自体は普通で、問題は波が来ない日の受け皿が無いことです。
「絶対にできる最小単位」を決めておきます。調子が悪い日は英単語1つでも達成とみなす。そして記録を残す。途切れていないことが目に見える状態をつくると、再開のコストが下がります。
成果が見えず不安になった人
英語力は日々の実感では動いて見えません。やっているのに進んでいない気がして、手が止まります。実際には進んでいても、見る物差しが無ければ分かりません。
1つだけ記録します。たとえば同じ短い文章を音読して、つっかえた回数を毎週数える。数字が動けば、実感より先に進捗が見えます。
教材を選ぶのは、そのあと
順番を整理すると、こうなります。
- 前回どこでつまずいたかを決める
- その型に合った「最初の一歩」を置く
- 1〜2週間続いてから、教材を選ぶ
実際には逆の順番になりがちです。教材から入って、続かなくて、また別の教材を探す。教材を変えても、つまずいている場所が同じなら、同じところで止まります。
自分がどの型かは、つまずき診断で確かめられます。6つの質問・約1分、登録は不要です。
やり方の各論
型が決まったら、実際の練習に落とします。よく検索される3つについては、それぞれ別にまとめました。
- 英単語の覚え方|大人がやり直すときに効く順番 — 詰め込みで覚えた単語が消える理由と、忘れかけに合わせた間隔の置き方
- 英語リスニングの勉強法|聞き取れない原因を3つに分ける — 音・速度・語彙のどこで落ちているかの切り分け方(聞き流しの前にやること)
- シャドーイングのやり方|社会人が続けられる最小手順 — 負荷を4段階に分けて、1日5分から成立させる形
仕事で英語を使う場面が決まっている場合は、そこから取る方が早いです。
- 社会人の英語学習|時間がない前提で設計する — 忙しい週に消えない置き場所の作り方
- 電話の英語が怖い人へ — 聞き取れない前提で用意しておく最初の一言と、数字の聞き分け
- 英語の会議についていけないとき — 入るための最初の3語と、具体的に聞き返す型
ただし順番は変わりません。 つまずいている場所を決めてから、練習を選びます。逆順にすると、前回と同じ場所で止まります。
決める順番と、続け方
何をやるかを決める話と、それを続ける話は別です。分けて書きました。
- 英語の勉強法|大人がやり直すときの、決める順番 — 教材の前に決めることを、順番に並べたもの
- 英語学習の習慣化|意志ではなく仕組みで続ける5つの手順 — 続かない側の設計。実行意図・最低ライン・記録・環境・再開の5つ
現在地によって、最初の一歩は変わります。
- 30代から英語をやり直す|遅いかどうかより、続く形があるか — 一度やめた経験がある人向け
- 中学英語のやり直し|全部やらずに、使う範囲だけ戻る — 文法の土台に不安があるとき、どこまで戻るかの判定
- 英語が話せるようになりたい|「話せる」を4つに分けて決める — 目標が漠然としていて決められないとき
- 50代から英語をやり直す|記憶ではなく、積み上げ方を変える — 覚え方そのものを変える必要があるとき
- 大人の英会話・初心者が最初の3週間ですること — ほぼゼロから始める場合の、最初の3週間
正直に書いておくこと
ここに書いたのは、行動科学の枠組みを英語学習に当てはめた整理です。「この方法で誰でも話せるようになる」という話ではありませんし、そう断言できるだけの根拠を私たちはまだ持っていません。
私たちがいま持っているのは、続け方の設計と、それを一緒に組み立てる仕組みです。続かないのは意志の弱さではなく、続く仕組みがまだ無いだけ——という前提から始めています。
よくある質問
- Q何から始めるのが正解ですか。
- 全員に共通する正解はありません。前回止まった理由が時間なら置き場所の設計から、やり方なら手順の固定から始めます。順番を間違えると、教材を変えても同じ場所で止まります。
- Q中学英語からやり直すべきですか。
- 文法の土台に不安があるなら有効です。ただし「基礎からやり直す」と範囲が広がりすぎて終わらないことがあります。使う場面から逆算して範囲を狭めるほうが、続きやすくなります。
- Q独学とスクール、どちらがいいですか。
- 独学で止まる原因が「やり方が分からない」であれば、調べれば解けることが多いです。「続かない」であれば、人が関わる仕組みのほうが効きます。どちらで止まっているかを先に決めてください。
Author
中川 代表コーチ
Hightouch English/Hightouch株式会社
英語をやり直す大人の学習設計を、行動科学にもとづいて組み立てています。
TOEIC 950点/関東甲信越英語教育学会(KATE)会員/全国英語教育学会(JASELE)会員